私は高校まではずっと日本の公立の学校に通い、日本の国立大学に1年通った後に中退、アイルランドの国立大学にて東アジア代表のフルスカラーシップ生として入学しました。
専攻は地学とソーシャルコンピューティングという分野で、第1等学位を取得し卒業しました。
アイルランドの大学在学中にアメリカの州立大学でのリサーチフェローシップに応募し、夏の間アメリカでリサーチアシスタントの仕事をしていました。
一夏のリサーチフェローシップを終えた後、卒業式に出るためにその後アイルランドに一時帰国しましたが、また同じアメリカの州立大学に今度は正式に雇ってもらい、アメリカに戻ってきて現在に至ります。
今回はそんな私の「リサーチアシスタント」としての仕事内容や、英語でのやり取りについてご紹介できたらと思います。
仕事内容
リサーチアシスタントの仕事は、多岐に渡ります。
まず分野がヒューマン・ロボット・インタラクション(Human Robot Interaction もしくはHRI)という分野で、簡単に言えば文字通り人間とロボットの交流やその影響について研究する分野です。
HRIの中でもより技術的な側面に重視している研究室もありますが、現在私が働いている研究室では、より人間を中心的に捉えた研究が行われています。
ロボット関連の最新技術の発展といったことよりは、ロボットの存在を通していかに人間の生活が改善できるか、またはロボット(特にソーシャルロボットという人間とのコミュニケーションを主眼に置いたロボット)との交流から人間にどのような感情が生まれるのか、ロボットと人間のジェンダー等が交差するとどうなるのか、といった社会的もしくは心理学的な側面が大きいと思います。
よって、研究者も心理学、社会学、エンジニア等々様々なバックグラウンドの人たちが集まって一緒に研究を行なっています。また、ロボットに関する研究を通し、必然的に人間とは何なのかということをあらゆる視点から考えさせられる分野でもあるので、哲学的な側面もあり、とても興味深いです。
具体的な業務はというと、教授や博士課程の生徒とともにリサーチプロジェクトを進める中でのデータ収集や関連書類の作成から、集まったデータの解析に毎週行われるミーティングへの出席まで、リサーチに関係すること全般的に行います。
特に私の属する研究室は人数が少なめでみなが家族のようなアットホームな雰囲気の仕事場なので、自由に状況を見て役割分担をしながら協力をして研究が進められていきます。大抵一人一人が一度に複数のプロジェクトに携わっていて、数々のプロジェクトが並行して進められていく中でみなが臨機応変にお互いのリサーチを助け合っています。
また、HRIという分野は日米間の共同・比較研究も盛んなため、頻繁に日本からもロボットを開発する企業の人々や研究者が出入りしています。偶然にも研究室で唯一の日本人の私は、研究資料の翻訳やローカライズといった作業も頼まれます。日本で誰もが知るようなゲームの会社や自動車企業も積極的にロボット開発に取り組んでいて、私たちはよくそのロボットを使用してプロジェクトを行います。
ロボットを使う研究という性質上、プログラミングが必要になることも多々ありますが、研究室のみながそれをできるわけではありません。また、ロボットに使用されるプログラミング言語にも種類があります。
上記の通り、私が所属する研究室は社会学系のバックグラウンドを持つ人が多く、全くプログラミングの経験がない人もいますが、それは、全然問題ありません。そんな時はコンピュターサイエンスの学生たちの助けを借り、彼らが得意分野で能力を最大限に発揮してくれます。
ロボットと聞くとすごくハイテクで全員がコンピュターサイエンスのバックグラウンドを持っているようなイメージがあるかもしれませんが、どちらかと言えば社会科学のバックグラウンドを持つ人々が率先してリサーチのデザインをしている新鮮な分野と言えるかもしれません。
コラボレーションが重要視される分野で、リサーチャーそれぞれが自分の長所に特化し、バックグラウンドの多様性から生まれる異なる視点を持ち込んでいます。一人では成り立たない研究分野です。
そして、プロジェクトの一環として、介護施設や幼稚園にアザラシ型ロボットのパロといったセラピー効果目的のロボットを持ち込んだり、ロボットの交流実験の後に参加者にインタビューしたりと、人とのコミュニケーションが求められる分野でもあります。
参加者は必ずしもロボットの知識が豊富にあるわけではないので、彼らにどういった目的でどういったロボット関連の研究がされているかといったその意義を説明するのも大切な仕事の一環です。
また、上記の通り様々な背景のリサーチャーたちが集まっているので、お互いがより良く理解し合えるように話し合うことも重要な業務の一部です。よって、その分野(例:プログラミング)に秀でてはいなくても、相手が何のことを話しているのかは理解できるように幅広く知識をつけておく必要もあります。
その分野を先導する教授と一緒にプロジェクトを考案したり共同研究したりできることは、とっても価値のある経験だと思います。日々、とても楽しく実りの多い体験をさせてもらっています。
具体的な英会話や英語でのやりとりでの成功失敗談に関するエピソード
日本語は敬語が難しい、と良く言われますが、英語においても丁寧さの段階の区別はあります。特に、教授や大学関係者にメールを送る時は、失礼にならないように気をつける必要があります。
普段対面ではカジュアルに話していて全くかしこまる必要性を感じない教授相手でも、メール等の文面ではフォーマルに書いておくと、失敗することはないのかなあと思います。
教授によっても国籍や性格によって異なるので、対面では下の名前で呼んでいる教授に「〜(上の名前)教授へ」と毎回メールを送っていたら、下の名前で良いよ、と指摘されたこともあります。メールを送る度、簡潔で分かりやすく、失礼のないように心がけています。
また、職場には様々な国籍の生徒や研究者がいます。カメルーン出身の学部生とともにプロジェクトに取り組む機会があったのですが、フランス語が母国語の彼女の英語は私は慣れていないもので、最初のうちはコミュニケーションをとる中で何度も聞き返したり、誤解が生まれたりということがありました。
しかし、いろいろなアクセントを持った英語を共通語とする人が働く職場にいると、耳も段々様々な英語に対応できるようになると思います。これも、多国籍な職場ならではの利点だと思います。特にコンピューターサイエンス系には中国系やインド系の学生が多いので、アメリカで働く中で彼らの英語をより良く理解できるようになりました。
今の仕事を通じて、英語を学んで得たメリット
やはり、自分の言いたいことを自由に言えるというのは非常に大きいです。
特にアメリカでは自分の意見を主張することが日本よりも求められるので、言語的にバリアがないということは普段は当たり前に捉えていますが、実際はすごく役に立っていると思います。
しかし、アメリカは人種のるつぼであり、研究室でも上記の通り非ネイティブスピーカーが大半を占めるくらいで、様々なレベルの様々な訛りのある英語が飛び交っています。
私の仕事は英語ができなければ成り立たない仕事ではありますが、こちらではみなそれぞれに思いやりをもってコミュニケーションが取られています。