フォロー・ミー(めざせインフルエンサー)
とあるビジネスニュースサイトで見かけた「インスタグラムの1投稿で、5000ドルを稼ぐインフルエンサー」の記事をキッカケに始まったセレブへのインタビュー。
世界のセレブが集まる中東のドバイにて、映像作家のアスリ・ベンダシャ氏が、SNSを活用して大金を稼ぐ人たちに、成功の秘訣を聞く様子を描いたのが、本作「フォロー・ミー」です。
32歳、無職のクリエイターがインターネット・セレブに直撃インタビューを敢行
URL:https://www.netflix.com/title/81037898
さまざまな文化と経歴の持ち主が、インターネットを介した社会的なつながりについて語ってくれるので、私たちにとって理解しやすい内容も多く、日常英会話のリスニング強化にも最適です。
今回はこのドキュメンタリーの魅力と英語学習へのポイントをご紹介します。
どうやったらそんなに稼げるの? SNS素人がセレブにインタビュー
"Max of Arabia" の名前で知られるマックス・スタントン氏 (Max Stanton) の記事から始まったインフルエンサー探しの旅では、筋トレを指導する美男美女から、芸術的な写真をインスタグラムにアップする芸術家までが登場します。
とにかく、視聴者のために何ができるのか?を考えるタイプの人や、お金ではなく「体験」を重要視して旅を続けるインスタグラマーなど、数々の「成功の秘訣」が語られています。
また、そのようなインフルエンサーから影響を受けたファンのコメントにも注目です。
有名なスポーツ選手や歌手ではなく、つい最近まで一般人だった SNSユーザーのどこにそんな魅力を感じているのか?が会話の端々に現れていました。
このように、従来テレビ局や出版社などの大手メディアがコントロールしていた情報が、個人発信に置き換えられつつある現状では、人の欲望や憧れにも変化が表れているようです。
たとえば、「ハリウッド女優が1億円のドレスを着ている」ことを雑誌で読んでも、話が大きすぎて、次に自分が取る行動に関連付けすることはありません。
しかし、インスタグラムの投稿で「スクワットしたら少しお尻が引き締まったよ!」という写真を見たり、「代官山の有名店でタピオカミルクティーを飲んでます」の様子をYouTubeで見ることは、ユーザーに直接的な影響を与えます。
ちょっと頑張れば自分にもできるかも?という感覚を起こさせるのが、現代のインフルエンサーの特徴と言えるでしょう。
英国でヘルスケアの広報を担当している、ポリシー・リサーチャーの ベア氏は、自らも SNSを通じて健康に関する情報を提供している
そのため、広告代理店のような職業の方々は、インターネット・セレブの動向に着目し、「彼らの何が顧客を惹きつけているのか?」リサーチを続けています。
さらに、国を挙げて観光立国としての施策を進めているドバイでは、SNSを活用して自国の観光地を宣伝してくれる SNSユーザーへの待遇を強化しているため、政府の観光課や企業の広報担当も、真剣にSNSでの拡散力を考えているようです。
主観ショットで撮影されているので、「自分がそこにいる」感覚
基本的にカメラ一台の POV(Point of View Shot) で撮影しているため、臨場感があり、自分がそこにいて会話しているような感覚で、自然な英会話を体験できるのも、この作品のメリットです。
登場人物が演技する映画と違って、スピーキングで重要な「口の動き」を数多く見ることができるため、同じ時間を使っても英語学習の効率が良く、ニュースキャスターのような早口でもないので、聞き取りやすいのがメリットです。
加えて作中では、インフルエンサーのプロフィールページも表示されるため、「だいたいどんなことをしている人なのかわかる」仕組みになっています。そのため、会話の内容が十分に聞き取りできなくても、映像を追っていけるでしょう。
たとえば、推理モノの映画だと、ある登場人物の一言がストーリーの流れを左右したりするので、リスニング力が不十分だと何が起きているのかわかりませんが、本作ではそれがありません。
ビジュアルと会話で出来事を説明していくので、一回目の視聴では「字幕無し」に挑戦するのも良いかも知れませんね。
ツールとして使う英語の素晴らしさ
中東が舞台の作品であるため、アラブ系の少しエキゾチックな発音も多いですし、少したどたどしい話し方の人もいます。逆にそれが、英語ネイティブではない日本人にとって聞き取りやすい内容ともなっていました。
行動を通じて、他人に影響を与えるコンテンツの制作を続けるインフルエンサーの一人、ラマ氏
日本にいる私たちが、本格的に英会話を学習しようとすると、会話の相手に選ぶのは「完璧な発音ができるネイティブの先生」という発想になるでしょう。
キレイな発音ができるようになったら、英語圏の人ともコミュニケーションがとれるはず……。という発想になりがちですね。
ちゃんとした発音ができないと恥ずかしい。という気持ちは、私たちの生活が「日本語さえ話せればやっていける」ため。
つまりは、「外国語が絶対的に必要ではない」という環境にあるせいです。しかし、世界には先祖代々の言葉以外を使わないと生活できない地域の人たちもいます。
一例を挙げれば、「アロハ~」で有名なハワイ語は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)によって、消滅危機言語として指定(※1)されていますし、日本の与那国語なども、その中に入っています。
(※1)UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger
このように、国の成り立ちによっては、親しい間柄で話す時の言葉である「母語」と、生活をする上で違う生い立ちの人と話すための「共通語」。これら、2つ以上の言語を使い分けをするのが当たり前、という環境もあります。
生きていく上で、母語以外も習得せざる得ない人たちと違って、1億3千万人を超える話者が存在する「日本語」を使う私たちは、恵まれた環境にあるのかも知れません。
しかし、だからこそ英語に対してハングリーになるべきでしょう。英語をツールとして使いこなしている世界の人たちは、完璧な発音の前に、とにかく自分の言いたいことを伝えるために英語を使っています。
まずは行動。そして他人との関わりの中で、オリジナルの価値を生み出す
旅する姿を世界中に公開するユーザーから、社会進出に挑戦する女性まで、さまざまな人生のカタチを表現しているインフルエンサーの皆さんですが、誰もが口を揃えて大事だと答えるのは「コミュニケーションの重要性」でした。
それも、ただ単に「家の中でテレビを観ている自分」を公開しても、フォロワーが集まるわけはなく、何らか他人と関わる行動を継続する、小さくてもアクションを起こすことで、他人に興味を持ってもらえるだけの価値を生むことができるようです。
日々学習を進めている私たちも、毎日の生活の中で「なんのために英語を学んでいるのか?」忘れがちです。本作は、自分自身のモチベーションを再発見することができる機会にも、なると思います。
それほど上手ではない英語からでも、人生を楽しんでいる様子が伝わる動画や、自分の夢や目標に向かって活動を続けているインフルエンサーの皆さんから、良い影響を受けて、自らも、その発信者になることができればベストですね。
マックス・スタントン氏のインスタグラム・フォロワーは67万人超え。現在も中東で活動を続けている
最後に、この作品のスタート地点となった、「インスタグラムの1投稿で、5,000ドルを稼ぐインフルエンサー」の記事を紹介して終わりにしましょう。
→「インスタグラムの1投稿で、5,000ドルを稼ぐインフルエンサー」の記事
・健康PR会社のベア氏のTwitter:https://twitter.com/beacadwallader
・中東で活躍するインフルエンサー、マックス・スタントン氏のURL:https://www.instagram.com/maxofarabia/
・日本・文化庁「消滅の危機にある言語」:http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html
・ユネスコ「消滅危機言語マップ」:http://www.unesco.org/languages-atlas/